代表的な保存食の1つといえる缶詰。幅広い用途に使える利便性が特徴で、災害時の食料としても役立っている。種類によって価格は様々だが、最近では100円ショップなどにおいて安価で買えるものも増えた印象がある。
原材料にはポピュラーなマグロ類、イワシ、サバをはじめ、サケやニシン、イカ、貝類、カニなどが使われる。製法別ではオイルサーディンが有名な油漬缶詰、水煮缶詰、ソリッド、ファンシーなどが挙げられ、醤油や味噌などで味付けされた製品も多い。
かつては輸出が盛んに行われており、昭和50年代には国内生産量の4割近くが海外で食べられていたが、円高の影響やアジア諸国の台頭などによって輸出量は徐々に減少し、現在では1割にも満たない。逆にマグロ類を中心に、輸入量は年々増加の傾向にある。

製造業者はパッカーと呼ばれ、発売元であるブランドオーナー(商標所有者)の指示によって生産を行う、いわば下請的な存在となる。消費者の手に渡るまでの流通については、パッカーから商社・卸を経由するルートや、パッカーが小売に直接卸すルート、パッカーからブランドオーナーを経て小売に卸されるルートなど、様々存在する。
経済産業省の統計によれば、平成16年の、4人以上の従業員を有する水産缶詰・瓶詰製造業の事業所数は全国で133箇所。平成11年(142箇所)と比べて9箇所の減少と、比較的小幅な減少にとどまっている。
原材料が魚類などの海産物であるため、漁獲量の変化による影響が避けられない業界だが、販売チャネルの増加によって缶詰の価格そのものが全体に低下していることや、海外からの輸入も今後さらに増えると推測される状況を考えても、安定した利益を確保するには消費量の底上げを早急に行う必要があるだろう。新製品の開発や、新しい原材料を缶詰に使う研究など、市場規模の維持に向けてブランドオーナーの手腕が問われることになる。
安価品の輸入が増加を続ける中、ツナ缶詰の出荷価格に値上げの動きが見られている。台湾での規制による輸入量の減少、中国国内の日本食ブームによる需要増加や原油高などによって主原料のマグロ価格が上昇したためだ。各メーカーは値上げに伴う需要の落ち込みを懸念し原価の安定したカツオを原料にシフトする他、サンマやイワシなどを使った製品開発にも力を入れている。販売チャネルが増えたことにより今後も市場の価格競争は激しくなると予測され、企業にとって安定した販売ルートの確保やコスト改善が急務となりそうだ。