食用油は原料の海外依存度が高いため、国際穀物相場や為替相場の影響を受けやすいのが特徴で、仕入先を複数化するなど安定して安価な原料を調達できる調達先を確保する必要がある。製油業は油と油粕に分離・精製する産業であり、基本的に加工度は低い。また搾油から製品までの一貫生産を行う形が一般的で、分業化が行われにくいという特色を持っている。

経済産業省の統計によれば、平成16年の動・植物油脂製造業の事業所数は202箇所。30年前の昭和49年(488箇所)と比べると半数以下に減少している。これは菜種やゴマなどの植物油脂の原料が輸入原料へとシフトし、国産原料型の中小零細工場が激減したためである。冷凍食品や惣菜類などに使われる加工用の需要は、売れ行きの良さもあって増加傾向にあるが、マーガリンやショートニングについては年々消費量が減少している。
原料調達に関しては、異常気象などによって農産物の収穫量の変動が激しい上に、原料を買い付けしてから製品化されるまで数ヵ月かかるという事情もある。よって、市場動向が反映された生産計画に基づく仕入システムの構築が不可欠となる。
市場が飽和状態を迎える中、工場新設などの設備投資は縮小している。また搾油技術はほぼ成熟しており、これ以上の技術革新はあまり望めないことから、省エネ、公害対策、リサイクルを目的とした既存工場の改良などが主流になると思われる。市場が拡大しているのは健康を意識した付加価値の高い植物性油脂の分野であり、肥満や成人病などが気になる消費者層に向けてタイムリーな商品の開発を行うための科学的研究にもより一層、力を入れなければならない。
心臓病やガンを引き起こす成分による身体への危険性が指摘されているトランス脂肪酸だが、日本でも発売されているマーガリンやショートニングには、このトランス脂肪酸が多量に含まれている商品も数多く市場に出回っている。油脂に水素を添加することで常温でも固体を維持させる効果があり、保存性を高める働きを果たしているが、その課程で発生する有害物が悪玉コレステロールを増加させるなどの危険因子となり、心臓疾患や子どもの肥満などを助長する物質として以前から問題視されている。既にニューヨーク市全域のレストラン、ファストフード店では使用が全面禁止されているが、過剰摂取の問題はないとされている日本においても、国が規制する前に消費者が買い控える動きが起こる可能性は高いと思われるだけに、安全性の保証された新しい製品の開発を急がないことには業界全体としても大きな痛手を招くことにもつながりかねない。