1930年代に米国で生まれたショッピングセンター(SC)は、1つの建物に小売、サービス、飲食など多種多様のテナントが入り、消費者のニーズにより大きく対応できる機能を備えた商業施設である。日本においても40年近い歴史を持つ店舗形態だが、本格的に出店が進んだのは平成に入ってからであり、短期間で大きな普及を遂げた。
大規模小売店舗法(大店法)の緩和(平成4年)および廃止(平成12年)を受けて急速に出店数が増加し、平成17年末現在でSC の数は2722店となっているが、一方では消費者の需要を超える出店の煽りを受け、コンセプトのはっきりしないSC が次々と淘汰されている状況もある。
それでも新規にオープンするSC の数は減ることなく、全体数も増加の一途を辿っている。業界全体の売上も毎月2兆円を超える規模で推移しており、百貨店と同様に需要の状況は改善されつつある。また市街地より郊外の出店が多いという特徴もあり、平成17年に開業したSC についても全体の約8割を郊外立地が占めた。
最近では大型店のキーテナントを持たないスタイルをはじめ、ディスカウントの専門店を集めた「パワーセンター」や在庫処分品を値引きして販売する「アウトレットモール」といった「安さ追求型のSC」、さらにはシネマコンプレックスなどのレジャー施設を併設するSC など、その形態も多様化しているが、この先市場が飽和する可能性は十分に考えられ、店舗間競争が激しくなる中、新規に出店する上では顧客ニーズを考えた店内構成の工夫がこれまで以上に重要となるだろう。
百貨店によるSC への進出も話題となっている。地下の食料品売場、いわゆる「デパ地下」と呼ばれるフロアだけをSC の施設内に出店させる形態で集客を狙うというものである。店舗によっては既存の食品スーパーや食品専門店街などとの競合が見られるケースもあるが、こうした新しい動きが来店客の購買意欲を高め、施設全体の活性化につながるプラスの効果を期待する声もあって、この先の進展が注目されている。
これまでSC といえば郊外型の出店というのが普通であったが、最近では徐々に市街地の近辺から中心へと移動する傾向にあり、大型スーパーやホームセンター、家電量販店だけでなく、大型書店やおもちゃ販売店、100円ショップなどキーテナントもますます多様化を見せている。流行のロハスや地元密着型などテーマ色の強いSC も次々と出店されており、SCを通じての商業政策もその幅が大きく広がっている。今後は法的な出店規制の動向も含めて、消費志向やまちづくりなど様々な視点でSC の存在意義をより深く考える必要もあるだろう。
《業界情報サイト》
イオン(株) 【東証1部】(http://www.aeon.info/)
(株)ダイヤモンドシティ 【東証1部】(http://www.diamondcity.co.jp/)
(株)イズミ 【東証1部】(http://www.izumi.co.jp/)
◆◆ 大規模小売店舗立地法(大店立地法) ◆◆
「大規模小売店舗法(大店法)」に代わる法律として平成12年6月に施行。店舗面積が1000㎡を超える大型店を対象に、交通渋滞や騒音、環境汚染など、周辺の生活環境や住民への配慮を考えながら、店舗と地域社会の調和を目指した施設計画を要求する内容である。
◆◆ ディベロッパー(またはデベロッパー) ◆◆
直訳すれば「開発者」だが、SCにおけるディベロッパーは不動産関連以外にも、運営コンセプトの確立や各テナントとの調整、さらにオープン後も集客努力や販売促進など、その役割は多岐にわたっている。
◆◆ カテゴリーキラー ◆◆
パワーセンターと呼ばれるSCに見られる業態で、特定の分野に絞って商品展開する代わりに、豊富な品揃えかつ圧倒的な低価格で販売するスタイルのこと。家電やおもちゃ、酒など、その種類も様々である。