粉末冶金製品とは、鉄や銅といった金属の粉末を金型に入れて圧縮し、成形した後に焼結させたものである。原料となる金属の粉末には、鉄や銅の他にニッケル、クロム、タングステンなどが用いられる。複雑な形をした部品の製造も可能なことから、自動車部品をはじめとして様々な機器の複雑形状部品、多機能部品として使用されている。
粉末冶金製品には機械材料・電気材料・超硬工具材料・耐熱材料などがあり、中でも機械材料が生産高の約6割を占めている。機械材料は機械部品・軸受合金・摩擦材料に分類され、その8割以上が自動車部品として使用されている。
業界は中小メーカーが大半を占め、自動車・家電メーカーなど主要需要先の傘下に入っているメーカーが多い。また需要先が内製により大量生産を行っている場合もある。経済産業省の「平成16年工業統計表」によると、従業員を4人以上有する事業所数は135ヵ所、従業員数は1万1067人となっている。
受注生産が中心で、需要先の景気動向に左右されやすい特徴がある。しかし基本的に、粉末冶金製品に対する製造業各社のニーズが高いことから、バブル崩壊後も需要の落ち込みは見られなかった。平成16年の出荷額は2866億円。主要業種である自動車製造業を中心に需要は上昇傾向で推移している。
世界でも評価の高い金型技術を生かすことのできる産業であり、安定した需要の継続が予想される。今後も技術力向上への努力を怠らず、受注先の多様な発注に対応できる体制づくりを進めていきたいところだ。
《業界情報サイト》
◆◆ 軸受合金 ◆◆
金属の隙間にできた気孔に油を流し込んだもの。油の補給を必要としないため、ハードディスクやCDなどモーター用の軸受から自動車のスターター、ビデオカメラのズーム・フォーカスまで幅広く使用されている。
◆◆ 焼結金属摩擦材料 ◆◆
粉末冶金法の「いろんなものが混ぜられる」という特徴を活かして製造される複合材料。銅系と鉄系に大別され、要求特性に合わせて様々な摩擦成分や潤滑成分が添加される。摩擦ブレーキやクラッチのライニングやフェーシングとして用いられる。
◆◆ 金属粉末射出成形法 ◆◆
樹脂成形技術と粉末冶金の技法を組み合せた部品製造法。形状自由度が高く、金属微粉末の使用によって焼結後の相対密度が95%以上になるため、物性も溶製材並みになるなど、他の製法にはない特徴を持つ。