楽器は情操教育に役立つという側面を持つ。そのためピアノに代表されるアコースティック楽器は主として子供の教育のために購入されるケースが大半である。一方で電子ピアノ・オルガンなどの電子楽器は教育目的以外に趣味・娯楽用として購入されることも多い。また電子楽器は新たな機能や音質の開発が可能で商品サイクルは短い。弦楽器では音楽活動を始める中・高生などにギターが、女性や中・高年層には個性的な音を奏でるウクレレが人気。子供の習い事で始めることが多いバイオリンなどは高価であることや、少子化の影響などによって需要が減少傾向となっている。
楽器類は比較的高額商品が多い。メーカーからの買い取り制なので楽器販売店としては売れ筋商品をできるだけ揃えるなど、慎重な仕入れを行っている。また電子楽器では多機能製品が増えており、顧客に十分な情報を与えて購入を喚起するために豊富な商品知識が要求される。アフターサービスの充実も欠かせない。

楽器の販売額は少子化や娯楽の多様化の影響を受けて減少を続けている。経済産業省の調査によれば、平成16年の楽器小売業の商品販売額は6122億円。事業所数は5366箇所で、平成6年調査時と比較して、10年間でおよそ1300億円、2000箇所近い減少となった。市場の縮小を食い止めるため、店頭販売のほかに訪問販売で見込み客の購入意欲を喚起し、新規需要層の開拓を行っている小売店もある。また学校向けの販売ルートを開拓し、新学期前後に学校向けの楽器類を売り込むことに成功している例もある。ただ、少子化の影響もあり子供向けの需要を拡大するのは限界がある。進行していく高齢化にむけて、今後はシルバー世代の老後の余暇としての需要を喚起したい。また若年層に人気のある歌手やバンドが実際に使用している楽器を店頭で演奏することができるようにするなど、興味は持っているが、楽器の演奏は未経験だという層の購入意欲を喚起し、需要の拡大を狙いたいところだ。